私のお兄ちゃん

私のお兄ちゃんは二人いるけれど次兄のことは書いておかねばならぬ
彼とは7歳離れている 末っ子で甘えていたところに私が登場
大いに気分を損ねたことだろう
その頃我が家は社宅暮らし でも臨月までご近所さんは気づかなかった
母のスマートさ 42歳で恥ずかしかったらしい
私を押し入れに寝かして隠していたのに
「あのねボクのお家に小さいお人形さんがきたの」とふれまわった兄


兄は好い男だった 鏡の自分に見惚れているような奴であったし
「お兄さんにこれを」なんて手紙を持たされるから嫌だった
字が上手くてほどほど成績がよく男前 こういうのは信用できない
だから優しい顔の字の下手な男がいいと思った


やがて私は結婚した
「なんだ ものには順序というものがある 兄より先とは生意気だ」
しかし7歳年上の兄を待ってはいられない
当時女が30になったら大変だったのだから


兄にはたえず女がいた 結婚したいと連れてくるその人達に
母は言い聞かせる
「あなたのように若くてきれいな人はこんな息子と一緒になってはダメ」
それでも兄は二回結婚して二回別れた ×2だ


たまに電話すると言う
「カラオケに行くと必ず(僕の妹)を歌うんだぞ」と
あらそう 兄らしくもなかったくせに
兄の妻は私よりはるかに美しくはるかに若かった
憎たらしかった 「お姉さんと呼べよ」ふんっである


最後の電話はいつだったのか
けんかした どうにも腹がたったのだ
兄のなにもかもが気に入らなかった


ずっと私を連れて子守役だった兄
釣りにも野球観戦にも行った
大好きだったのに・・・・・


母の葬儀の時に近所のおばさんが言った
「こちらのおばあちゃんは娘さん達には厳しかったけど
 息子さんにはずいぶん甘かったですねぇ・・・」
そうか感じたままだったか 周囲の見方と同じ 解かり易い母
「母さん! 目を開けて!」母の臨終の間際の兄
バカみたい 死んじゃうのよと私は思った


姉達にとっては気にかかる弟
便りのないのは良い便り