預かり物 貴重

私は読書に没頭していた
ここが何処なのかもわからぬほどに
なん時なのかもわからぬほどに・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
遠くから しかし 耳元に声がした
「お手洗いに行ってきますから荷物をお願いします」
わたしは顔を上げ こっくり無言でうなづいた


はっとして見やればゆっくりあるいてゆく道行コートの後ろ姿

      


私は預けられた荷物を腕で抱きこんで傍に寄せて待った
空いていた席がどんどん人で満席になった
その方はなかなか戻って来ない・・・
心配になったが あのゆっくりした足取りだ 待った


      


静かに足音もなく戻られ
「ありがとうございました 助かりました」と仰る
この花柄のふくろと小さなお財布が入っているらしいバックを
二つさげてバス停に向って行かれた
「はい お気をつけて」私が声に出したのはこれ一言


      私は絶対安全剃刀になっちゃったのね