友人

私は夫の転勤に伴いあちらこちらと引っ越して歩いたから
遠いところに友達がいる
会うことはまあめったにない 時折メールか葉書で近況を伝えあう程度


鎌倉に住むようになりマンションの自治会の役がまわってきて
その時に気の合う友人を得 楽しいひと時を過ごすことができた
彼女は10年ほどイギリスに暮らしていたので
その時の生活を聞くのも楽しかったし様々な事を教えてもらった
ゆったりした性格で体躯もまたゆったりふくよかで
私は彼女の奏でる話に耳を傾けては遠い異国を思い描いていた
小説でしか知らないイギリスの風景が 彼女の口から語られ
そしてオリンピックの今年は思う存分イギリスの景色を堪能できた


バス停で列に並んで 私は4人目だった
ふと一番前の人が振り向くとなんと彼女だった
私達は何かと忙しくなり会う機会がなくなって数年経っていたから
懐かしく嬉しく それを言いながら無沙汰を侘びた


いつも素敵なお洒落をして一目で品物の良さを感じさせる服装で
ブランドバックを持ちとても似合っていたのに様子が一変していた・・・
「疲れちゃったのよ」 それは同じよォ 忙しい年頃になったんだね
親が歳をとって亡くなったり体の自由が利かなくなったり
それをいつと期限なく労わり続ける疲れ 親を哀れと思う驚き
よくわかる もう少しゆっくり頑張っていこうと心の内で言う


人にはいろんな場面が訪れる
精一杯で対処する たび重なれば慣れていく でもその都度哀しい
でも楽しいことや嬉しいことがいっぱいあったじゃないか
春の訪れは嬉しかったし花を愛で歩いた
夏は暑さに悪口を言いながらも空を仰いだ
秋は夕暮れ・・・ひんやりした空気を深呼吸で味わい
冬は温かい夕餉に幸せを感じた


「またね 今度お茶しようよ!」うん そうね 楽しみにしてるわ
彼女と別れて 化粧っ気のない肌を思い その疲労を重ねて思った
私だって頑張ってこなせた あなたもきっと乗り越えられる
幾分疲れの残る自身を励ました






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