奥様・・・

なんだか様子のちがった方が向こうから歩いていらした
履物は片方のみ パジャマにカーディガン・・・
ご老人だが私はその方の孫ではないので
「奥様 どうなさいました? お宅はどちらですか?」と伺った
彼女は困った様子で 何も言わない 歩き疲れていらっしゃる
背負ってさし上げたいが 肉付きがよろしくて私には無理・・・
こういうときの携帯電話! バックに無い 忘れてきた 
デジカメじゃ役に立たない・・・・・


ゆっくり手を引いて路地からバス通りに出た
交番まではちと遠い 郵便局にお連れして訳を話した
ご近所だろうし警察に連絡してくれるだろう
ホッとして 泣きそうになった


夕刻 夫から電話
「ねえ 雨が降ってきちゃったんだけどさ」
私は日没後は外に出たくないのだが
致し方なく迎えに行った 人通りは昼間より多いくらい
帰宅時間なんだなあ・・・
「あぁ わるいね ありがとう 夜に歩かせて」
朝の出来事を話しながら帰宅した


あの奥様にはすぐに迎えが来たかしら
温かいお茶でもいれてもらってゆっくり事情を話されて
お宅からご家族がいらして暖かく安心に過ごされているはず



行く道かもしれない 「私」に出会えるだろうか
寒い路地に行き倒れになったらなったでそれもいいか。



      「 尋ねれど木枯らしの吹く野辺ばかり 」 ゑぽむ





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