ガツンと言った!

「温厚な優しいひと」大方の人は夫をそう評する


「お幸せでしょう 理解があっていいわねぇ」これが続く


私もついそう思いこんで何十年ときてしまったが


彼はいつも居ない人だった


だから気付かずについうっかりしてしまっていた


転勤や度々の出張で ほとんど長年留守だった


金子はくれた 任せてくれた


私はひたすら節約し子供がふえりゃ通帳をつくり


毎月貯金をしていた


趣味は習いにはなるべく行かず本やテレビで独習した


材料は格安なもの 500円の粘土や ?円の籐


姉達からのお下がりを直して着たり 生地を何かに変身させたり


器用な手は実に重宝であった


しかるに 感じてならぬこの違和感とストレス なんであろう


疲れるのである 主人在宅症候群と名のつくものか


いてほしいときに居なかった 助けが必要なのに独りだった


それが今は 毎日帰ってきる それも早い早い時刻・・・


そしてなにかと領海侵犯してくる


何も言わない温厚なと勘違いしたのが多忙であったからだ


言わないから暴言を聞くこともなかった


だから とうとう ガツンと言ってしまった


以下順不同



    「人にも猫にも思いやりの無い暴言はよしてね」


    「(Kちがい)なんて気軽に口にしないでね」


    「この年末年始を悩んでいるの よかったら


     姉さんの家でも弟の家でも遊びに行って下さいな」


    「私は家を出るわけにはいかないからあなたが出て行ってね」


    「この約束を破ったら私は何をするか解りませんよ


     ご承知置きくださいね」



歩きながら電車の中で また帰途でこのように分けて言い渡した


私としては清水の舞台から云々のことであった


「Eさんの言うことは本当かもしれないね」と夫


「かもではなく事実なのですよ」


夫はとうとう謝った   


なにより淋しがりやで甘えたのくせして威張る 長男め


これは実に幸せなやりとりに聴こえるだろうが そうではない


消極的なDVに悩んだ末の告発である


ここのところすっかり疲れて体調を崩した原因はここにある


自分を守り 彼に優しくするためには言うしかなかった


「オレは出来る」そういう考えの人間にはガツンが必要だ


家の中でも使いたい言葉ではないがパワハラがある


これを彼が会社でやっていないとは限らない


知らなかったでは済まないのだ


お互いの心の安寧のために 縁あって出会った他人の同居を


少しでも心地よく過ごすために


静かにしずかに言った


ノートに書いたことを読みあげるように


ガツン ガツン ガツン。。。 




             以上





              ・