「濡れ布」 ウエットブランケット

国営放送を見ていた
番組のアナウンサーが人事異動であるらしく
挨拶で感極まって涙ぐんで声をふるわせていた
ヘンだなとは感じたがそれだけだった


夕方やはりニュース番組のアシスタント女性が
同じく「皆さまのおかげです これまでありがとうございました」と
やはり涙をこらえている


こちら側からすれ首を傾げる違和感だ
ただの年度末のことではないか


少し前なら何も言わずに別の顔が登場して
あぁ 担当者が変わったのだなとしかおもわなかったし
ニュースも天気予報も事実を伝えていたように記憶する


民間放送局のバラエティ番組ならいざ知らず
なんという無様をさらすのか
一般受けをねらっているとすればまことに浅薄としか言いようがない


さて「袴田事件
あたかも幸運が舞い込んだと云わんばかりの報道だ
彼の一生を台無しにしておいて何だ!
証拠をねつ造した捜査員は取り調べを受けているのか
それには露ほども触れられない
再審では証言するのか 白状するのか
どれだけいたぶられたことだろう
30歳の青年のある日の暗転地獄


冤罪ということは真犯人がいるということだ
その者は安穏として暮らしているのだろうか
被害者の親兄弟親類縁者が抱いたであろう憎しみは
その「憎しみ」の行方はどこなのだ
自責の念を抱かざるを得ない立場となった人々の悲哀


いくらなんでも「良かったですね」ではない
「喜びの会見」でもない
あの方たちは怒っていいのだ


記者はどんな質問をしたのだろう
法務大臣の言葉はいかにも当たらず障らずに終始


証拠のねつ造 その者をまず罰せよ


しかし 恐ろしいのは私自分である
その時 その近所に住まいしていたならば
どのように考えたかである
捕えられた袴田さんを誹ったかもしれぬ
そうでないとは言いきれない



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