とっさの一言

「何すんだよ!」
大きな声がしたので顔をあげた
どこにも声の主を見いだせなかったのだが
70代らしいご婦人が「ごめんなさい、済みません、失礼しました」
こう言って謝っている 
怒鳴った声の主は黒っぽいスーツを着た70代の男性
どうやらはずみでご婦人の手が男性の持つコーヒーをのせたトレイに
ふれてカップが落ちてしまったらしい


お店のスタッフが二人駆けよって
男性には「コーヒーをお持ちしますのでお席でお待ち下さい」と言い
ご婦人には「大丈夫ですからお席にいらしてください」と
テキパキと動いていた
その間 ご婦人は4回男性に謝った スタッフにもお礼を言った


男性は憮然としたまま私からは見えない席についたようだ
少しして携帯電話の声 件の男性
「あぁ 今出て教える」と言いながら店の外で手を振っている
間もなく小柄な婦人が入ってこられた 奥さんかな・・・。


男性はコーヒー1つと頼み水と砂糖とミルクを用意しトレイにのせて
テーブルにもどったようだ


何度も謝っていたご婦人は
立ちあがってスタッフに「お世話をおかけしました」
男性の方に向いて「ほんとうにご迷惑をおかけしました済みません」と
頭を下げて出ていかれた。
返事の声は聴こえなかった。


一部始終を見ていたが
人相風体卑しからぬ男性のとっさに出た言葉の粗暴なことには
実におどろいた
普段からそのような言葉遣いをしているからこそなのだろう
いろんな人がいるものだと
店内の雰囲気が変わるほどの「威力」を感じた



ただこれだけの事だが
人はいろんな経験を積むことによって
成長し続けるのだと良く考えていたことが
やや覆された気もした そうでない人もいることは居る
それだけのことだろう




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