八月になったのだった

 ちょっとぼーっとしていたら八月になっていた

 あらゆる命がおんおんと響き渡り

 空は地上を仕切っている

 陽に枯れた葉さえも逞しく立ち

 次は次はと花が待つ

 人は小さな傘の下にうずくまり歩きし

 吹き出る汗の流れを拭う

 うっかりすると淘汰されそうだ

 八月 一昨年の八月 老猫コバが逝った

 貴婦人のような最期だった

 あの碧い目を思い出すだに愛おしい

 太郎がもたらした幸福コバとの出会いと別れ

 惜別の涙は夫婦初めてのことだった

 コバ 長い事一緒に居てくれて

 そのうえ思い出までこうして新鮮だ ありがとう

 あなたの仲間友達は元気でいるよ やんちゃでもある

 耳しか似てない妹みけは大人しいよ

 何も語ることのないものたちの慎ましさ

 いつの日にかまた会うこともあろうか

 八月の猫 別れのコバ 



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