ひとさらい

 本一冊もって里山に行く

 そういうことが好きだった

 何気なく母に言うと、激昂!

「どんな者がいるかわからないのに 一人で馬鹿なことをするんじゃない
 世の中にはあなたの知らないことがいっぱいある
 それはそれは恐ろしいんだよ 今後一切行ってはいけない」

 あまりの突然の母の震える怒りに一言もなかった


 これは私が中学生の頃のことだ

 時は過ぎ里山は都会の真ん中にも出現

 叱ってくれる近所のおばちゃんもおじちゃんも居なくなった

 早く家に帰りなさい 

 暗くなると人さらいがでるよ




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