長姉を訪ねて

 姉は千葉に住んでいる

 この夏に戸建の家からこじんまりした間取りのマンションに越した

 そして、こうである

「私が死ぬ場所を見に来てよ 安心するから」

 それじゃあ行かなくちゃとラッシュ時刻に出だした

 電車で2時間以上かかる 途中座れるかと期待したが・・・

 東京まで立っていた 

 この老女に席を譲ってくれる人はいない(苦笑)

 姉夫婦は元気でいたが 姉は引っ越し疲れでまだふらふら

 持って行った庄内柿を「むいてあげようか」と言うと

 それくらいはできるという 

 お昼は義兄がお寿司をとってくれた

 私はマグロが苦手なのでエビとホタテに取り換えてもらって

「白っぱけたつまんないお寿司ねぇ」と言われる

 20歳も違う三人の会話は故郷をめぐって ややずれながら

 それでも十分共有できて心豊かな時を過ごせた

「泊まる?」泊まらないわよ 帰ります

 駅までのタクシーから見送る老夫婦に千切れるほど手を振った

 帰途はゆうゆうと座って読書したり夕暮れてゆく車窓をながめる

 またおいでね うん来るからね

 夫の帰宅の30分前にセーフで夕飯の支度

 姉と義兄との会話やマンションの間取りを話して

 そうかそうか 良かったな

 私の役目を自覚した日だった





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