夏樹静子さん逝く

作家の夏樹静子さんが亡くなられたと報道で知った

彼女の本で一番印象的なのは「白愁の時」

アルツハイマーについて世の人々が耳にし始めた頃だった

自分が日々刻々と失われていく恐怖 諦観

最後はいつも縛られていたと思しき腕時計を

空に向かってほおり投げる

単なる興味だったものが明らかに私自身にも近づいていると

感じられるこの頃となった

ほかに「Wの悲劇」「椅子が怖い」など

ほんとうに身近な物語がたくさんあってわくわくとさせられた

もの静かな面差しにお別れをしなければならなくなった


          合掌



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