美容師さんと本話

私はベリーショートであるから 4、5週間に一度はカットに行く
もう10年にもなる美容室
60代の生活感をまったく感じさせない男性
娘さんが手伝っている 孫が中学生だって 信じられない
画家でもあるというより「絵では食ってけないからね手に職つけたのよ」
ということらしい


最初の頃はただただ黙ってカット 終わるとニコっと
「ありがとうございました」だった
あるとき近所のコンビニでばったり出会い「こんにちは」
御実家がすぐ近くだったのだ


美容室は広い 床も壁もダークな茶色
彼の抽象画がかけてあるのみ
たまに具象もある 猫 魚 顔

本の話をする 読んでいる読んでいる
本を読んで話をする友達は居ないが美容師さんがいる


シンセミアを読んでげっそりしたんですよ」と言ったら
「あぁ僕もすぐ読んだ いやだった もうこいつのなんか読むもんか」
 やっぱりさ本ていうのは何かを啓発されたり楽しめたりしなきゃね」と


髪は伸びるから行くのが楽しみ 静かなピアノ曲が流れていて
スタイル画もシャンプーの宣伝広告も無しの空間
予約だけれどたまにはちょっと待つ
大きな丸いテーブルにある本は厳選されている
銀花は休刊になったから無い そう そういう感じ