春本番の吟行もどき また


        

       もうすぐと握りしめたるコブシかな  ゑぽむ



        

       母の手のものなる形見な鳴きおり  ゑぽむ


        
        

       松竹梅これを内着に居たか母  ゑぽむ



        

       香りたつ約束のまた果たされて  ゑぽむ



昨日は辛い事を書きましたが 母の手仕事は素晴らしかったのです
和裁を教えていた母の手は見込まれ指名が多かったそうです
習っていたころからその手は冴えていて
先生が任せてくれていたようです
一番怖かったのは目の見えない方の「仕上がりの確かめ」だったそうで
その手指での採寸は正確であり「はい よろしい」との言葉をもらうまで
身がちぢむ思いで心臓が高鳴ったと言っていました
やがて生徒に教える立場となり 厳しい先生だったでしょう
あるときの中学生の時の参観日に「先生!」と母に駆け寄った同級生の
お母さんがいました 母は懐かしそうに話していました
帰り道に「なぜ友子ちゃんのお母さんは先生って呼んだの?」と訊くと
「昔のことだよ」とそれだけ答えました
母の死後 叔父に聞かされました 女学校で教えていたこと
休みの日には延べ200人ほどの娘達が家に通ってきていたことを。
縫い目は実に細かく正確で 見惚れるほどです
姉のところにあったメリンスの襦袢です きれいな色と柄
若い日の母も父も私は会ったことがありませんが
想像することはできます
真面目な父母だったのだなぁと ありがたく感謝します
私の内側に確かに父母は生きている そう感じます。




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