「告白」Ⅰ

まあたいていの場合 子供時代と云うのは


何事もなく安穏に過ぎるように思われるのだがそんなことはないのである


来る日も来る日も 様々な困難に出会う


子供は物知らずだし力が無い


家出しようにも近所の広場に立ちつくし 兄に抱えられ連れ戻され


裸足の汚れを また叱られながら雑巾で拭われる


兄姉はあてにならない お巡りさんは怖いし 保健所は遠いし


病院はちょっと違うような気がしたし 行き先が解らない


と いつもいつも前置きが長いのが悪い癖の私だが・・・


気持の持って行き場に困り果てたのは小学校の三年生くらいだった


思いつめていたにしては 淡々と しとげたのだ


母の「部分入れ歯」を持ち出した


商店街を抜け ずんずんずんずん歩いて野原の向こうの畑の傍の


肥溜めに ぽんと捨てた


せいせいしたかどうかは憶えていないが


家に帰ると母が「さがし物」をしている


たしかにここに置いたはずなのに さて・・・


私の方には目も向けぬ 埒外なのだ


何とも思わなかった 知らんぷり以前の ぽかんぷり


はずしていたくらいだから按配のよくない入れ歯だったのだろう


また作りに行ったのかしらん


私はそういう子供であった


いや なに 真面目にバカがつく成長をして


今に至り早や老化が始まっているが


芯はワルである





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