母へ

歌を
口ずさみつつ野すみれを愛で
八分咲きのさくらを見つつ
再びの春の野を立ち止まりして
目指す美術館になかなかに
たどり着けぬが
それもまた嬉しく
道は迷うようにできているはいとおかし
晴明なる日にめぐまれ歩む幸いよ
一年に一度の一人旅は
いつからか一人ではなくなった
母よ私は元気です
あなたのようにどんどん歩きしています
これからが私の春
暖かき光の中によきものたちの
確かなるかたちが見える
清澄なる町並みに
子供等の姿ありて
幼き声で挨拶のうれしくありし
そは信州