僧侶の背中


        

      編傘を取れば直ちに吾子よ吾子   ゑぽむ


八月の鎌倉は静かだ 海に向かって歩く若者がいるばかり
空いたバスに乗り合わせた修行僧 日に焼けて逞しい
すわったとたんに僧ではなくなり青年になった
その手指は母の小指を握ってかくも柔らかであったもの
透明なよだれを拭っては抱きしめていたかの日よ






                ・