つんぼ餅を食べる

 これは差別語なのだろうが


 初めて知った故郷の言い習わし


 「つんぼ餅を食べる」ということ


 なんだかたまらず姉の家に電話をしたのだ


 必ず義兄が出る


 「お兄さん こんばんわEPOMです 文太さん亡くなっちゃいましたね」


 「あぁ そうなんだ3ヶ月ばかり前に会ったんだ


  いつも学校にいく朝待ち合わせてな 丁度になったり遅れたり


  でも必ず待って待たせて一緒に自転車こいで登校だった


  さびしいもんだな

  
  あ、お姉ちゃんに代わるからな」


  姉は存外けろりとしていて


 「こんな時はね(つんぼ餅)を食べてなかったことにするのよ」と言う


  あまりにも悲しい淋しいことがあったら


  餅をついて食べる


  なるほどなぁ 真っ白な餅をついてみんなで食べる


  その場にはいなくなった人はいない 皆顔がそろっている


 「そういう言い方があったの?!・・・」


  二昔も違えば生きた時代も悲しみの往なし方も別にあったのだ


  そうか それなら 私も使い語り継ごう


 (忘れない)のではない(変わらぬ日々)を生きる


  知恵とは貴重なことだ


 「悲しまないで自分が楽なようにして生きなさいね」


  姉の言葉は心に沁みた ありがとう





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