井上ひさしさんは難解で面白い

        

 ほぼ毎日家事を8時半に終える 
 もたもたしていると 冷蔵庫の下の埃や集めに集めた手芸素材が煩い
 とっとと家を出て100円コーヒーを飲みながら読書
 一時間半は読める 
 井上ひさしさんはうっかりしてると人中でぷっと吹き出して笑ってしまう
 とっさに文庫で顔を隠すが間に合わない
 大きな声で独り言で歩いている方もいるし
 わらうくらいはなんでもないだろう

「皮があったらかぶりたい」これはいい!
 マフラーもあるから皮の代わりにはなる 
 私が身を隠せる穴なんてそうそうは無いではないか アハハ

 
 1.2時間 アルバイトをしてコーヒーをご馳走になり
 またおいでねと言ってもらえる自由さ
 私をあてにしつつも縛らないでいてくれる雇い主がいる
 ありがたくも幸いなり


 オーナーは少しのことでゲラゲラ笑う
 その声に救われる
 

 もう一冊のほう「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」
 鎌倉に川端康成さんがやってきて
 地代は安いし歩けば海だしいいよ!といったかどうだか
 文士なる人々が集まった
 当時はごく普通の娘さんは小説家や詩人と結婚するなどあり得なかった
 なんだか変なおじさんの戯言が面白かった


 さて あちこち読むものだからどれに書いてあったか定かでないが
 川端さんが「変」になったと察した奥様が
 なだいなださんに頼んだという
「あなたは医学と文学の半々にいるのですから ぜひとも医学のみに徹して
 吾が夫を救ってくれまいか その責務はあるんじゃございませんこと?」
 なだいなださんは丁重にお断りなさったそうだ
 文豪の妻とはこれほど「ずうずうしい」ものかと可笑しかった


 さて話は変わるが息子のように思っていた青年がいた
 某国立大学を出て憧れの職場に来てメンタル疾患がおきた
 話す機会が幾度かあった
 びっくりしたのは彼が小説を読んだことが無いと言ったことだ
 ついては何がお薦めか?と・・・
 三十歳過ぎて初めて読むにふさわしい小説ってなんだろう
 答えられなかった それは欠陥じゃないかしら


 ノンフィクションでもフィクションでも物語でも
 何かにはふれる機会があったはず
 避けていたのかな
 彼はもう居ないから残念至極


 井上ひさしさんを紹介すればよかったかな
 しかし難解だものねぇ 容易くはない
 



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