ぶらんこ乗り

いししんじ著の「ぶらんこ乗り」を読みながら
病院の検査を待った
引きこまれるので 看護師さんの言う事も上の空
「ずっと着き当たりの左で検尿コップをもらって
 あちらのトイレで採ってコップを置いて
 ファイルはむこうの受付に出してください」
早口で三つも言われちゃ不安になる 血尿が出ちゃうよ・・・
また本にとっぷりつかって待っていると
夫がやって来た「あら いいのに」
「いやいやEPOMちゃんが心配だもの」と本を読み始めた
私もとっぷり日が暮れそう・・・
又呼ばれて エコー検査にX線撮影 三階に地下に 歩き回る
また戻って本を読む
やっと(EPOMさん2番診察室にに入って下さい」とマイクの野太い声


「大きな石は出ちゃったみたいです あと二つありますが融かす薬を
 出します お薬二種類です 来週予約で来て下さい」
結石破砕機械のポスターがあった
こんな目に遭ってみたかったなあと思っちゃう
ちょっとひどい膀胱炎も併発している 自己診断の通りだったわけだ
終わって帰りみち二人でラーメンをたべた
ふわふわの湯気の中メガネが曇るが気にせずフーフーと
一気に食べた 本にとっぷりつかるみたいにラーメンにつかった



     いししんじ著「ぶらんこ乗り」から


「わたしたちはずっと手をにぎることはできませんのね」

「ぶらんこ乗りだからな」

だんなさんはからだをしならせながらいった。

「ずっとゆれているのがうんめいさ。けどすこしだけでもこうして」

と手をにぎり、またはなれながら

「おたがいいのちがけで手をつなげるのはほかでもないすてきなことと 
 おもうんだよ」

ひとばんじゅう、ぶらんこ乗りはくりかえしくりかえしいました。
あらしがやんで、どうぶつたちがねむったあともふたりのぶらんこ乗りは
やみのなかでなんども手をにぎりあっていた。