ちょっと・ショート ⑨ 喪中欠礼

これだけは自分でつくる気になれないのでプリントショップに頼んだ
3月20日逝去 享年89歳 絵柄を選び 名前を記入
申込用紙を見直して差し出しながら



        「胃が痛い」



おじいちゃん あなたが逝ってしまってからなのよ
私はずっと本調子ではない
頑張ってばかりで休憩する気になれない
どうしてだろう 夫の父親なのに
一緒に暮したのはほんの三年ばかりだ
転勤であちこちの地から年に三回帰省する程度だった


遺品を片づけながら 初めて見た若かりし日の義父の顔
新婚当時の義父母の姿 はにかむ母
まだ子供が居なかったのだから「お母さん」ではなかったのだけれど・・


そして写真は家族の歴史を物語る
義父の八十九年をドキュメントで見たようで、そっとなぞったようで
私は実の父の死よりも濃くそれを受け止めてしまった
いや 理解できる年齢に今 自分が至ったということなのだと思い知る


幾度 繰り返しただろう
人との久遠の別れの悲しみをこらえてしまい心に体に溜めこむ癖


刷り上がった葉書に宛名を書いて投函して
そして ほんとに終わりにしたい
「おじいちゃん 長生きなさいましたね お休みください」
さようなら またね と


考え方の癖を直すのはむずかしい
もし変えられるものならば それを受け入れる心の平静を
そして変えるべきことを変える勇気を 力を
それらを正しく見分ける英知をお授け下さい 神様




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