ちょっと・ショート

One more time,One more chance

山崎まさよしさんという歌手がいる夕べ歌謡番組で 大竹しのぶさんと昭和34年の「黄昏のビギン」をデュエットしていた 彼の声 彼の顔 いつも想っていた 18歳の太郎を家から追い出した時 寝ても覚めても明けても暮れても「太郎 太郎 太郎 太郎 太郎・・・…

ソフトクリームの魔女

いろんなお店があって そこにテーブルと椅子が設置され ゆっくりできる場所がある。 まあ、子供らが走り回り 幼子が泣き、ジジババたちはかまびすしい! 珈琲一杯で本を半分読むのに 文句も言っていられまい。 見回すと!目が釘付けになった! 魔女が二人で…

小さな物語り

おやっ なんでしょう EPOMさんに聞いて来てみたのよ まあ! あらあら お友達を連れて来ましょう ねえ びっくりでしょ! わあ きれい! ただ見ていただけなのに きのこさん疲れたのかしら そっとしておけば良かったわね EPOMさん がっかりしていたわね 名前も…

ちょっと・ショート(13)螺子巻き時計

いまどき好きだからといって なんとも頼り無い時計を見つめ そして思い惑うこと しばしば 「今 何時でしょうか?」と尋ねようとすると その二人連れの一方が「今10時何分?」と一方に訊いた 「15分よ」との声に 黙って自分の時計を合わせることができた …

ちょっと・ショート ⑫ 夢jya

子供の頃からむやみにめったやたらに本を読みつつ成人し そして老齢期に近づいてくると・・・いや 真っただ中か?・・・ 人生が物語なのか事実なのか混同しないまでも作り話にしてみたくなる 誰でももれなく思春期に陥るファミリーロマンスのようなもの 「私…

ちょっと.ショート ⑪ I My ミー

ホームの向こうから手を振っている 懐かしい愛しい恋しい人 走り寄る 目と目が合う しっかりと優しく抱きしめてくれる腕の温もり 逢いたかった 話したかった あれはいつのことだったろうか もう何十年も前 私たちは猫と暮らしていた とても穏やかな日々 お日…

ちょっと・ショート ⑩ グレーテルその後

ハガキの書き方を知らないので それを教える授業が小学校で なされているそうだ 例をあげれば 郵便番号欄には携帯電話番号を余り書きし 住所と名前を左右あるいは上下反対に書き なかには名前だけ書けば届くと思っている子もいるらしい これは携帯メールとイ…

ちょっと・ショート ⑨ 喪中欠礼

これだけは自分でつくる気になれないのでプリントショップに頼んだ 3月20日逝去 享年89歳 絵柄を選び 名前を記入 申込用紙を見直して差し出しながら 「胃が痛い」 おじいちゃん あなたが逝ってしまってからなのよ 私はずっと本調子ではない 頑張ってば…

ちょっと・ショート ⑧  夢

夫を座卓にしばり付け 動き出さぬよう座卓ごと大型冷蔵庫にはりつけた そうでもしなければ いつまでたっても片がつかぬと思ったからだ どんな力が出てそのような荒事が出来たのかは解らないが 気がつくとその有り様だった そして妻は覚悟していた 火を放つ算…

ちょっと・ショート ⑦ 楽しいデジカメライフ

この節 北鎌倉から電車に乗ると満員です それも半裸の女の子たちのグループがいっぱいで どれが誰やら見分けがつかぬのですが 片肌脱いだ遠山の金さんがいたり 背中全部を出していたりと いったいどこから乗ってきたのか 寒くないのか案じてしまいます カッ…

ちょっと・ ショート ⑥ りぼんのつぶやき

あたし りぼん ビックリしないでね あたし もう死んじゃうんですって 26日までは元気だったの 急に具合が悪くなってEPOMお母さんが病院に連れて行ってくれて 血液検査をしたら ドクターが 「とても悪い数値です 人間なら人工透析を要する状態です このまま…

ちょっと・ショート  ⑤ 太郎からのメール

お元気ですか? 昨日中学生のとき以来で「沈黙」を読みました 遠藤周作のね。 母もきっととっくに読んでいる本だろね、 信仰というものに足をふみいれかけの身には切実でした。 鎌倉の家を発つ晩、母はもう二度と会うことはないと言ったね。 あれは僕が家か…

ちょっと・ショート  ④ 土蔵

丸男はいわゆるキレるガキだった 幾度となく閉じ込められた土蔵の暗さなど平気だったから 泣きも騒ぎもしなかった まあ 入れられる前にさんざっぱら大騒ぎしているのだから 土蔵の中は丸男の昼寝場所といった趣だった 蔵の一番高い所にある小さい明りとりの…

ちょっと・ショート ③ 畳職人の憂鬱

イトーヨーカドーかサトーココノカドーか まあ どこでもいいのだけれど ブラブラといつもは行かないスーパーを 歩きまわるのも面白い 目的もなくあちこち眺めながら歩数を稼ぐ 一万歩を越せばよし と そこに 畳屋さんが出張出店しているではないか 様々な畳…

ちょっと・ショート  ② やがて告別

こんな時にこそ 心を合わせて共に頑張らねばならない そういうことに直面した時に限って 男というものは素知らぬ顔をきめこむ 受け止める気持ちはあっても力がないのか 力はあっても重い物を持ち上げる力にすぎないのか とにかく能力の全てが会社というもの…

ちょっとショート ①魚

私は愚かにも釣り上げられ冷たい氷がゴロゴロ入った箱に入れられた もはや海に帰ることはできないのだ この釣り人はおそらく私を水槽に入れることなど思いもよらないだろう 私は体をS字型にくねらせ ささやかな抵抗をする しかし魚は手も足もない いうなれば…

こよなくアダルトな話

義兄が海外出張から帰った夜のこと 春子姉さんは洗濯ものやらお土産やらをバックから出し 明日お陽さまに当てようとバックを裏返した・・・ カチンっと音がして床に何かが落ちた 小さな鍵・・・「コインロッカーの鍵だ!」 春子姉さんは何食わぬ風で過ごし …