BANの家
このお宅にはバンという犬がいた
大きめでシェパードのような優しげな表情をしていて
時折に吠える声も穏やか
犬はどちらかといえば目を合わせて御機嫌をうかがう程度だから
頭を撫でたりはしなかった
何年かこの線路沿いの細い道を通るたび
番犬のバンかな 門番のバンかな 留守番のバンかなあなんて
思っていたけれど・・・
バンバンやビリー・バンバンのバンバンかもねっと
ある日 通りかかると 貼り紙がしてあった
我が家のバンは○月○日命を終えました
可愛がって下さった皆様にお礼を申し上げます
長い間ありがとうございました
家族の名前の表札にバンの名前も書かれていたのだった
バンは家族であり ご近所の人気者だったのだ
飼い主のお父さんか息子さんかしら
バンとの別れはどんなにか哀しかったことだろう
やがて犬小屋も片づけられた
この道を通るたびにバンを想う
そしてこの家の方々の優しさと心遣いを学ぶ
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