義母の命日


        

      答えてよ遠い国って何処なのか   ゑぽむ



昨日と今日の境目に義母はひっそり召されていった


お葬式が終わって帰る車の中で義父が言う・・・


「お葬式はいつなんだい?」


お父さん さっき皆さんがお焼香して下さったでしょう


終わって家に帰るところなのよ


「え? そうかい んで いつお葬式をするんだい?」


だからね 丸男さんが挨拶と御礼を言ったでしょ


どうしちゃったのだろう


医師は午前零時頃に自然に苦しまずに心臓が止まったのでしょうと


そう診断したのだった


幾日か過ぎて 父が言った


「ばあちゃんはなぁ 朝に匙でご飯をやったら二口三口食ってなぁ


 ふーっと息して 仰向いて それっきりだったんだ」


あぁ そうだったの そうなのね


お医者さんが間違っていたのね お父さんが正しい


義父がそのように思うなら それが真実なのだ


おばあちゃん 幸せだったね 朝ごはん食べてから出かけたのだもの


義父はそのように緩やかに夢見て心に決まりをつけたのだろう


ふだんと変わらない様子にもどって


マイペースに動き出した


「忙しくてなぁ でも一人だから楽だわい」


「返事をしてくれる相手が居ないのは淋しいわいなぁ」


そして昔々 横須賀の軍需工場に動員されていて


休みの日には鎌倉にきて鳩サブレをたべた話をしてくれた


おじいちゃんのお母さんは優しかった?と尋ねると


「ん? 母親かい・・・うん 優しかったな」


なんて呼んでいたの?


「呼ばなくても用は済んだわい」


お母さんの名前は?


「忘れちまったな」


お母さんはお母さん以外ではないから名前は忘れていいんだね


夫が言った


「EPOMちゃんだけが じいちゃんと話せるんだな」と


「お母さん(私)帰らないでおくれよ」


おじいちゃん ごめんなさいね


帰らなけりゃよかったね


でも やっぱり 召されることは決まっていたのでしょうね


洗ったシーツと枕カバーは折り紙みたいにぴちっと畳んでおいてくれた


ありがとうございました


あぁ お義母さんの命日なのにお義父さんのことだけ書いちゃった


二人は一つだったから いいでしょ


義母の好きなチョコレートをお供えして


ご飯のおかずは大好きな筋子がいいわね






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