命をかけて子を守るということ


        


この本の作者 古処誠二氏は1970年生まれだ
実に私は瞳目したのだ
氏の作品を6冊読了した 全作品を読むつもりだ
彼が若いということはこの先 ずっと追い続けることが可能ということ
なんという幸運な出会いであろうか
小説の態をなしていながら史実を語り、現実を白日のもとにしている。





          「感想文にかえて」EPOM


佐藤という担任は言った「慣れてるよね こういうことに」
「いいえ先生 幾度も転校しましたがこんな学校は初めてです
 その言い方はないでしょう おかしくありませんか?」


息子は当時160センチ48キロ 相手は180センチ70キロはあった
毎日のように(因縁)をつけられていたのだ
大きな図体の向こうに○先生さまの姿を認めても知らんぷりだった
そしてその先生は「キミ、気にしないようにしなさいね」と言ったという
我慢の限界がきて息子はある日 つかみかかっていった
それは昼休み 吹き抜けの作りの四方から丸見えのバルコニー
生徒たちの声は歓声に近かったという
誰もが欲していたことが起きた 誰もが恐れていた不良は
ふいを突かれて仰向き倒れた それに馬乗りになって胸をつかんだ


するとある生徒が息子の靴を持って裏門にまわれと言った
皆が転校してきてたった二ヶ月の息子を守ろうとしてくれたのだ
それ自体が身を危険にさらすことを充分に知った上で


「虐め」も「恐喝」も中学校にあるなど認めるわけにはいかないのだ
表立ってしまうことを学校と言う場所は、そして教師は恐れる
校長、教頭の意向であり 教育委員会との無言の約束なのだ。
いつからこのような様になり下がったのか
それはわからない
近年モンスターペアレンツと呼ばれる親が急増しているらしいが
そんな者が居ない頃 ひたすら黙って卒業を待つか転校をするか
それしか手はなかった


悪ガキの親が町の有力者であった場合はもっと悲惨なこととなる
それはH市で経験済みであった


我が子を守るために あてになるのは親自身である
我が子が殺されないためになら 法さえ犯すだろう
その気構えを持ち捨て身になって初めて道が開ける


お母さんはね あなたを守るためなら何でもするよ
あいつらを並べて機関銃で撃つよ 抹殺するよ
「ほんと? ボクを守ってくれる?」
ほんとうよ お母さんは強いんだから誰にも負けない


保身のみ 定年まで何事もないように もみ消しをする
親子で校長室に呼ばれたこともあった
担任と 何故か下の子の担任も居て 校長は言った
「君は成績が良いそうだね 水泳の記録も良い
 頑張っているそうじゃないか」
私たちはその間 一言も発しなかった


事が明らかになった時のために既成事実を作っているだけだと察した
それは 言うなれば悪意の塊であった
ろくな者ではない 言語同断をゲンゴドウダンと発音する程度の者
茶番に付き合わされて時間を無駄にした。


人を舐めてはいけない 憶えている名前 そして狡猾が浮き出た顔を






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