白き花に出会う


日傘で暴風雨のような日射から逃れつつ早足に脇目もふらずにいたのに
呼びとめられて立ちすくんだ 吸い寄せられ炎天下をわすれた


        


夏目漱石

「仏性は白き桔梗にこそあらめ」


ここにおわするのも縁





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      一握の砂を噛むよな日のありき   ゑぽむ


羊歯の手に虫を握らされたのか 器用なものだなと行き過ぎて戻った
あぁ 何を口にしても味のしない日々があった
それでも手際は変わらずに家人の夕餉をつくりして
味が変ではないかと訊きつついた
そうか それならいいのだけれど
女は習い性で過ごせるから それはどうあれ長引くことになる
仲良しではない友人といえるのか 縁切りしたいのだが
たまに訪ねてきては長居していく
チャーチルは「私の中の黒い犬」と呼び 飼いならしていたそうだ
犬も猫も暑かろう 黙ってうろうろ少しでも涼しい所に陣取っている
私の内も涼しいか そうか 立秋までなら居てよい 特にゆるす






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