太郎次郎物語

 
 猫の恋背中は牛かパンダかと


「ねえ太郎! 田んぼに牛がいるよ!」
「違うよお母さん パンダだよ」
そんな頓智のきく子であった


息子たちが小学生のころ 田んぼの真ん中に住んでいた
続く田んぼのその先に小学校があった
校下校の姿を 台所の窓から見通すことができた


その続く田んぼは今も仮設住宅が建ったまま
蛍もいたし 蛇の抜け殻もあったのに 


    校歌
 朝の輝き 空の青 
 泉蔵王の峰はるか欅の森の芽吹くとき
 心豊かに立ち上がれ
 我が学び舎の知恵と業 知恵と業


ところどころしか思い出せないがメロディはハミングできる
同じ小学校に長男は二度入った 次男は一度


自衛隊霞目駐屯地のその先だから 番外地のその先だったのだ
子供たちは幼くて健康で 私たちは若かった


田んぼの上の仮設住宅の湿気はいかばかりだろう
次郎はPCでテクテク歩いてみたという


なつかしい 私達一家の原風景


子供らは幼く健康で 私は何も怖くなかった
泣いてばかりの次郎の心持も我が身に重ねて理解できていた
他人がなんと謗ろうと 問題外
幼稚園の先生は実に良くしてくださった


私が母親になったのは偶然か必然か
当然のことに決まっている


愛し子よ 正しくあれ
ひたすらに祈りあげる 
お母さんがいなくなっても健やかに生きていくのだよ




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