姉の思い出


 次姉とは16歳も歳が離れている
 それはそれは今の16年とはまるで違う時代背景があり面白い
 昨日何の話からか赤んぼの時のことになった


 「EPOMさん あなた赤ちゃんの時に神隠しにあったのよ 憶えてる?」
 えぇ?! なあに 知らない どうしたの?
 

       如月に蚊帳の話で季語あっちゃ ゑ?


 とにかく三月生まれの生後半年足らずの赤ん坊が夜中に消えた!
 母が騒ぎ 父が起きだし 「裕一郎と慎司郎も起こして探せ!」
 屋敷の中をくまなく・・・と姉が言うので それじゃ大金持ちみたい!
 じゃ官舎中を…と言えば役人みたい
 長屋中といったらちょっと貧乏くさい
 事実を書きたいと言うと どうせ確認できないのだから大袈裟にしとけと姉


 とにかくご近所さんまで声かけて探して「私」は見つかった
 なんと緑色の蚊帳の裾にくるくるくるまって親指をチュッチュしながら
 眠っていたのだそうだ これがみどりご
 昔のこととて開けっ放しで就寝の安全安心時代のお粗末


 私は真夏に蚊帳のミノムシになって眠っていた
 その赤ん坊の顔を次姉は昨日のように思い出すんだと言う
 可愛そうなは誰でしょう
 心配した親姉兄とご近所さんか 眠っていた私か・・・


 なにしろ平穏な夜に起きた大騒動 で 赤子小さく!
 

 義兄が入院するというので心配お見舞いの電話をしたらの
 この話 姉も肝がすわっている
 もっと話して上げるからね いっぱい昔を覚えてるからねと
 ありがたいやら 意外な事実にビックリやら
 一人っ子状態で育った気がしていたが
 案外そうでもなかったようだ
   

 しばし想像の翼を広げて楽しんだ 思い出の伝達




                🌼