椋鳩十「片耳の大シカ」


       


小学校の5年生の時 国語の教科書に出てきたお話
私は国語が大好きでしたから夢中になりました


屋久島という島二人の猟師が片耳の大シカを仕留めようと待ちかまえます

ひときわ大きなシカで仲間を引き連れて巧みに猟師たちの手を逃れている

そういう曰くつきのシカでした

突然襲った大嵐に二人はやっとのことでほら穴に逃げ込みます

びしょぬれの二人は寒さに震え死にそうです

しかし暗闇に目が慣れてくると不思議な光景がありました

いつもは反目しあっている動物たちが

それはそれはたくさんの動物たちがじっとしているのでした

嵐が過ぎるのを待っているのです

二人は寒さに耐えきれずシカの群れの中に入り込みます

温かな毛が二人をつつんで暖めてくれました

ふと気がつくと 嵐はやんでいて動物たちは静かに列をつくって

ほら穴から出てゆくところでした

そこには あの片耳の大シカがいました

銃を向けることは止めた二人でした


屋久島に! きっと大人になったら行こうと私は誓いました
その島にいるという「ぶどう色のひとみをした鹿」に会いに行こうと


屋久島は沖縄よりもある意味遠い島でした
そして屋久杉や鹿に会うには山登りの経験がいるのだと知りました
大人になるにつれて屋久島は遠く遠くなり
この物語だけが心に残りました


テレビで放送されて現地に行かなくても見ることが出来るようになって
私は幼いころの夢をかなえました
でもぶどう色のひとみの鹿は今のところ映っていません
いつかカメラがとらえてくれるでしょうか 楽しみにしています