母の思い出


        

      鳴いてたら連れて帰るにこのトマト  ゑぽむ



朝起きると真っ先にトマトをたべる 大好きなトマト丸かじり


この可哀想なトマト 自転車のカゴからガッタンと飛びだして


路上に置き去りの憂き目に遭ったのだ


白菜の4分の1も目撃したことがあるし


もやし一袋もあった


袋の口はちゃんと縛って帰りましょう


私は落としたことがないなあ 歩きだから



            

トマト いや亡母の思い出 


子育て真っ最中の頃 私はずいぶん痩せていた


里帰りすると 母が夫に訊いた


「丸男さんEPOMはちゃんとご飯食べてるんでしょうか」


亡母という人はちょっと雰囲気が変わっていたから


誰一人として軽口を言う人はいなかったのに


夫はKYだからこう答えた


「さあ 食べてるのを見たことないんです」


あっはっはの冗談になったけど


娘の私ははらはら見てた


この夏は昼食もトマト一個とカシューナッツとトコロテン


こんなメニューで生きぬいている


夕べ夫が言った


「もっと食べないと萩子さんにオレが怒られる」と


やっと真意が解ったようだ やれやれ年月とはありがたい


しかし 肉も魚も餡子も食べたくない


朝食は目玉焼きとオリーブパンとサラダとウィンナ半分


母はもっと食べない質だったけれど76歳の誕生日まで生きた


享年77歳だって   今になって思えば若い


私はもっと長生きして息子たちの文句を訊いて言い訳しいしい居たい


道端に落ちてたトマトからいろいろ想う日だった




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