歌人 田井安曇(たいあずみ)さん

ある日の朝日新聞折々のうた

   ✿ 別れきて門をくぐれば人恋うる吾よりかなし母の目とあう


あのころは毎朝切り抜いてはノートに貼っていた
そうしつつこみあげるものは 母と母なる自己の悲しみであった
何故伝わるのだろう 内緒の恋のはずなのに
(吾よりかなし母の目)
恋ばかりではない なにしろ何でも伝わってしまうこの以心伝心というもの


   ✿ 人の子の教師は貌を失うとさびしきことを読みてしまえり


そうなってしまうのだ どうであれ我が子ではない 預かり物
どう教え諭そうと 貌は無い
さびしきことにちがいない


   ✿ 恐怖はまことすぐそこに来ていれば詩人のごとき耐えうるや否や


詩人ではないが確かに私は狂人である
しかし(すぐそこに来ている恐怖)をしるものだ
幾度も耐えて これからも子のために生きる
消えるわけにはいかぬのだ




・正しき子汝をひたりと守らんとあらん限りを超えて戦う  ゑぽむ



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